エージェント・チャオはワン・チャーリー博士へ■■氏がSCP-■■■との対談の申請を申し出ました。ワン・チャーリー博士は警備員2人の配置、高性能カメラ・高性能マイクを搭載したドローンによる記録を条件に承諾しました。

エージェント・チャオが■■氏を連れて洞窟内へ入る。■■氏の表情は強ばっている。

エージェント・チャオが■■氏を財団が用意したベッドの上で点滴に打たれている状態のSCP-■■■まで連れていく。

■■氏の黒色の虹彩から涙が零れる。

■■氏はSCP-■■■が乗っているベッドの前で両膝を地面につける。

■■氏の両手がSCP-■■■の手を優しく握る。

■■氏：母さん。

SCP-■■■の瞼がゆっくりと開かれる。

■■氏は涙を流しながらSCP-■■■を見つめる。

■■氏：俺だ。■■(別の呼び方と思われる)だ。俺が分かる？

SCP-■■■：[か細く]■■？

■■氏は何度も強く頷く。SCP-■■■は優しく笑った。

SCP-■■■：更にかっこよくなったわね。前のあなたは髪が長くて、とても綺麗だったけれど。でも、今のあなたも素敵よ。

■■氏：うん。[鼻をすする]今も、■■と2人で暮らしてる。まだ、願い続けてる。

SCP-■■■は優しく笑う。点滴針を刺していた左手が■■氏の手に重ねられる。

SCP-■■■：ねえ、■■。お父さんからお母さんの話は聞いたでしょう？

■■氏は頷く。

SCP-■■■：そうよね。わたしはイワシからここまで来たの。あなたたちを見て一度死んだけれど、まだ死に切れていなかったから、またここに来たのよ。

■■氏：[声を震わせながら]なぜ、死に切ろうって思ったんだ？俺はもう[鼻をすする]、もう父上たちのように看取りたくない。母さんだけでもいいから、生きていてほしい。

SCP-■■■は首を横に振る。■■氏の手から自身の手を離して■■氏の両頬を包んだ。

SCP-■■■：■■。そんなわがままを言わないで。■■■(該当する人物は不明、おそらく■■氏のパートナーの別の呼び方)と共に生きる選択をしたのでしょう。わたしはもう役目を終えた。あなたはあの子と生きるだけで、わたしへの願いはしなくていいの。

■■氏は首を横に振る。流れた涙はベッドシーツを濡らしていく。SCP-■■■は笑う。

SCP-■■■：大丈夫。心配しないで。お母さんは生まれ変わる準備をしに行くだけなの。そんなに泣かないで。

■■氏は瞼を閉じて唇を震わせる。また首を横に振る。

SCP-■■■：■■。笑って。わたしはあなたの笑顔が大好きなの。笑ってくれたら、お母さん、嬉しいわ。

■■：嫌だ。逝かないで。また会えたのに[嗚咽を漏らす]こんなのって、理不尽だ。

SCP-■■■：■■。ちゃんと前を向いて。お母さんばかりを見てないで、■■■と共に生きなさい。

SCP-■■■の左手が白く発光する。■■氏は瞼を開けて更に涙を零す。

SCP-■■■の左手が消える。点滴針が落ちる。

SCP-■■■の右手が白く発光する。ゆっくりと透明になって■■氏の頬から離れる。

■■氏：母さん！

■■氏は透明になるSCP-■■■の手を掴む。しかし消えて空を掴んだ。

SCP-■■■がエージェント・チャオへ顔を向ける。

SCP-■■■：そこのあなた。こちらへ来てくださいませんか。

エージェント・チャオは頷いてSCP-■■■、■■氏へ近付く。

SCP-■■■：どうか、この子をよろしくお願いします。この子はただの人の子です。財団に収容させないでください。

エージェント・チャオ：もしそれが叶わなかったら？

SCP-■■■：叶わなかったら、あなたたちに災いが降りかかるでしょう。そうならない為に、どうか。

エージェント・チャオは深く息を吐く。

エージェント・チャオ：分かりました。ワン博士とご相談させていただきます。

SCP-■■■はやつれたように笑う。SCP-■■■の身体はつま先から白く透明に発光していく。

■■氏：［声を荒げる］母さん！母さん！やめてくれ、お願いだから、逝かないでくれ！

SCP-■■■は■■氏へ笑いかける。透明になって見えない上肢を上げて■■氏を抱き締めるように屈む。

■■氏は嗚咽を漏らしながらSCP-■■■を抱き締める。

SCP-■■■：[小さく囁く声。一時的にノイズが入った為録音に失敗している]

■■氏：[鼻をすする。3秒の沈黙が流れる]分かった。絶対に忘れない。■■と一緒に覚えておく。

SCP-■■■：約束よ。愛してるわ、■■。

■■：俺も。愛してる。

SCP-■■■の黒色の虹彩に星が強く瞬く。涙が溢れるがすぐに空気と化した。

SCP-■■■の身体が薄く透明に変わり果てていく。■■氏はSCP-■■■から離れない。瞼がゆっくりと閉じられる。

SCP-■■■の顔、髪も透明に変わりベッドシーツの重みによる皺も消える。■■氏は自身の重みのみのシーツを見ても起き上がらない。

〈記録終了〉

■■氏との再会を経たSCP-■■■は完全に無力化されました。財団から提供されたベッド、点滴類を撤収した530時間後に洞窟の入口が封鎖され、現在は侵入不可能となっています。

また、■■森はSCP-■■■の終了に伴って財団から所得権を放棄しました。後の■■氏による発言で、現在の■■森は■■氏が作ったと見なされるSCP-■■■の墓が湖より5km離れた場所で発見されています。

■■氏はSCP-■■■が無力化された翌月にパートナーである■■氏と共に『墓参り』をしに■■森へ訪れました。