インタビュー記録SPC-■■■-3
対象:SCP-■■■
インタビュアー:ワン・チャーリー博士
付記:インタビューはSCP-■■■のいる洞窟にて高性能カメラと高性能マイクを搭載したドローン、財団の備品である折り畳み式テーブルと椅子を用意した状態で行われました。
〈20■■-01-28〉
SCP-■■■:ワン博士。こんにちは。
ワン・チャーリー博士:こんにちは。昨日はありがとうございました。残り10分のところでドローンのバッテリーが切れるところでした。
SCP-■■■:[小さく笑う]いいえ、あの子が教えてくれたことをあなたに伝えただけです。
ワン・チャーリー博士:そうですか。では、昨日の続きをお願いします。
SCP-■■■:はい。■■はわたしと婚姻の儀をしたがっていました。わたしも同じでしたけれど、あの人にはもう相手がいる。しかも跡継ぎだから婚約解消なんてものはあの人の家の醜聞となる。だからできないと言いました。でも、■■と一緒になりたかったから、作りました。
ワン・チャーリー博士:作った?
SCP-■■■:[頷く]
ワン・チャーリー博士:それはなんですか?
SCP-■■■:わたしたちの、子供です。子供を作りました。
ワン・チャーリー博士:子供、ですか。人ではないのに?
SCP-■■■:わたしが作りたいと願えば作れます。それで■■と身体を交わらせて妊娠しました。
ワン・チャーリー博士:その子供はどうなったんですか?
SCP-■■■:産みました。でも、1年で産んだんじゃなくて、ええと、何年かしら。多分4年ぐらい経ってから産みました。
ワン・チャーリー博士:それもあなたが願ったから?
SCP-■■■:[頷く]
ワン・チャーリー博士:続けてください。
SCP-■■■:あの子は■■の家に引き取ってもらいました。それからわたしはここでずっとあの子を見守って。いろいろありましたけど、すくすくと育ってくれました。
ワン・チャーリー博士:その子供は■■さんの跡継ぎに?
SCP-■■■:いいえ。あの子には上に2人の兄弟がいました。彼らのうちの1人は、あの子を守ってこの森で亡くなりました。[3秒の沈黙]助ければ良かったけれど、助けたらあの子の運命が変わってしまうから、できませんでした。
ワン・チャーリー博士:運命、ですか。先程4年ほどの期間を経て出産したと言いましたが、何故それほどの期間を空けたんですか?
SCP-■■■:あの子に運命の人がいるからです。あの子の運命の人は4年後に産まれるから、合わせて産みました。あの子の為に産みました。
ワン・チャーリー博士:同じ歳にしたかったんですね。
SCP-■■■:[頷く]あの子の人生を作らせる為になるべく手を貸さないように見守っていました。だから1人の兄が死んでしまうのも助けられなかった。あの子が家の中で一人ぼっちになっていても助けられなかった。助けてしまったら、わたしは■■の妻に殺されてしまって、あの子の人生を見られないままで終わってしまうから。人は愛する子供の往く先を見守るものでしょう。だから死にたくなかったのです。
ワン・チャーリー博士:では子供のその後は?
SCP-■■■:それは言えません。けれど、運命の人と結ばれているのは確かです。
ワン・チャーリー博士:そうですか。
SCP-■■■:[5秒の沈黙]あの子も苦労しました。あの子も能力を持っているのですから当然です。
ワン・チャーリー博士:能力?
SCP-■■■:あの子はわたしと違って半分人間なので、あまり引き継がれてはいないけれど。自分で時を巻き戻せるのです。
ワン・チャーリー博士:時を巻き戻せる。それもあなたは見られますか?
SCP-■■■:[頷く]
ワン・チャーリー博士:それはどういったものですか?
SCP-■■■:単純なことです。あの子の運命の人を護り抜くために、初めて会ったある一定の年齢まで巻き戻せるだけのもの。運命の人が亡くなってしまった事実を見た瞬間に巻き戻してもう1回最初から。お遊戯を満足するまでやり直すのと同じです。
ワン・チャーリー博士:[2秒の沈黙]生きていたら、それも収容する対象となりますね。
[SCP-■■■の黒色の虹彩が赤くなっていく]
SCP-■■■:[声を荒らげる]やめてください。あの子は彼と一緒にいなければならないのです!
[6秒間の画面のノイズ、録音の断絶]
[6秒後、それらは全て復旧した]
SCP-■■■:[2回の深呼吸]ごめんなさい。取り乱しました。
ワン・チャーリー博士:いえ。こちらも不躾な発言をしてしまいました。こちらが謝るべきです。
SCP-■■■:[弱々しく笑う]今日はもう、寝かせてください。
〈記録終了〉
〈終了報告書〉
SCP-■■■と■■氏の間に産まれた子供を調査した結果、三男の■■氏であることが判明しました。また、■家の跡地から出土された文献にて彼の運命の人間であろう人物の氏名が遺されていました。■家と■家の文献を共に読み合わせると同時に、■■■■年に存在していた各地の国家の詳細の調査を行う予定です。