[追加記録2]

〈20■■-02-24〉

エージェント・チャオはワン・チャーリー博士へ肖寧氏がSCP-■■■との対談の申請を申し出ました。ワン・チャーリー博士は警備員2人の配置、高性能カメラ・高性能マイクを搭載したドローンによる記録を条件に承諾しました。

〈記録開始〉

エージェント・チャオが肖寧氏を連れて洞窟内へ入る。肖寧氏の表情は強ばっている。

エージェント・チャオが肖寧氏を財団が用意したベッドの上で点滴に打たれている状態のSCP-■■■まで連れていく。

肖寧氏の黒色の虹彩から涙が零れる。

肖寧氏はSCP-■■■が乗っているベッドの前で両膝を地面につける。

肖寧氏の両手がSCP-■■■の手を優しく握る。


肖寧氏:母さん。


SCP-■■■の瞼がゆっくりと開かれる。

肖寧氏は涙を流しながらSCP-■■■を見つめる。


肖寧氏:俺だ。寧児(別の呼び方と思われる)だ。俺が分かる?


SCP-■■■:[か細く]寧児?


肖寧氏は何度も強く頷く。SCP-■■■は優しく笑った。


SCP-■■■:更にかっこよくなったわね。前のあなたは髪が長くて、とても綺麗だったけれど。でも、今のあなたも素敵よ。


肖寧氏:うん。[鼻をすする]今も、宁巴と2人で暮らしてる。まだ、願い続けてる。


SCP-■■■は優しく笑う。点滴針を刺していた左手が肖寧氏の手に重ねられる。


SCP-■■■:ねえ、寧児。お父さんからお母さんの話は聞いたでしょう?


肖寧氏は頷く。


SCP-■■■:そうよね。わたしはイワシからここまで来たの。あなたたちを見て一度死んだけれど、まだ死に切れていなかったから、またここに来たのよ。


肖寧氏:[声を震わせながら]なぜ、死に切ろうって思ったんだ?俺はもう[鼻をすする]、もう父上たちのように看取りたくない。母さんだけでもいいから、生きていてほしい。


SCP-■■■は首を横に振る。肖寧氏の手から自身の手を離して肖寧氏の両頬を包んだ。


SCP-■■■:寧児。そんなわがままを言わないで。宁麗文(該当する人物は不明、おそらく肖寧氏のパートナーの別の呼び方)と共に生きる選択をしたのでしょう。わたしはもう役目を終えた。あなたはあの子と生きるだけで、わたしへの願いはしなくていいの。


肖寧氏は首を横に振る。流れた涙はベッドシーツを濡らしていく。SCP-■■■は笑う。


SCP-■■■:大丈夫。心配しないで。お母さんは生まれ変わる準備をしに行くだけなの。そんなに泣かないで。


肖寧氏は瞼を閉じて唇を震わせる。また首を横に振る。


SCP-■■■:寧児。笑って。わたしはあなたの笑顔が大好きなの。笑ってくれたら、お母さん、嬉しいわ。


■■:嫌だ。逝かないで。また会えたのに[嗚咽を漏らす]こんなのって、理不尽だ。


SCP-■■■:寧児。ちゃんと前を向いて。お母さんばかりを見てないで、宁麗文と共に生きなさい。


SCP-■■■の左手が白く発光する。肖寧氏は瞼を開けて更に涙を零す。


SCP-■■■の左手が消える。点滴針が落ちる。


SCP-■■■の右手が白く発光する。ゆっくりと透明になって肖寧氏の頬から離れる。


肖寧氏:母さん!


肖寧氏は透明になるSCP-■■■の手を掴む。しかし消えて空を掴んだ。


SCP-■■■がエージェント・チャオへ顔を向ける。


SCP-■■■:そこのあなた。こちらへ来てくださいませんか。


エージェント・チャオは頷いてSCP-■■■、肖寧氏へ近付く。


SCP-■■■:どうか、この子をよろしくお願いします。この子はただの人の子です。財団に収容させないでください。


エージェント・チャオ:もしそれが叶わなかったら?


SCP-■■■:叶わなかったら、あなたたちに災いが降りかかるでしょう。そうならない為に、どうか。


エージェント・チャオは深く息を吐く。


エージェント・チャオ:分かりました。ワン博士とご相談させていただきます。


SCP-■■■はやつれたように笑う。SCP-■■■の身体はつま先から白く透明に発光していく。


肖寧氏:[声を荒げる]母さん!母さん!やめてくれ、お願いだから、逝かないでくれ!


SCP-■■■は肖寧氏へ笑いかける。透明になって見えない上肢を上げて肖寧氏を抱き締めるように屈む。

肖寧氏は嗚咽を漏らしながらSCP-■■■を抱き締める。


SCP-■■■:[小さく囁く声。一時的にノイズが入った為録音に失敗している]


肖寧氏:[鼻をすする。3秒の沈黙が流れる]分かった。絶対に忘れない。宁巴と一緒に覚えておく。


SCP-■■■:約束よ。愛してるわ、寧児。


■■:俺も。愛してる。


SCP-■■■の黒色の虹彩に星が強く瞬く。涙が溢れるがすぐに空気と化した。


SCP-■■■の身体が薄く透明に変わり果てていく。肖寧氏はSCP-■■■から離れない。瞼がゆっくりと閉じられる。


SCP-■■■の顔、髪も透明に変わりベッドシーツの重みによる皺も消える。肖寧氏は自身の重みのみのシーツを見ても起き上がらない。


〈記録終了〉

肖寧氏との再会を経たSCP-■■■は完全に無力化されました。財団から提供されたベッド、点滴類を撤収した530時間後に洞窟の入口が封鎖され、現在は侵入不可能となっています。

また、瑚雀森はSCP-■■■の終了に伴って財団から所得権を放棄しました。後の肖寧氏による発言で、現在の瑚雀森は肖寧氏が作ったと見なされるSCP-■■■の墓が湖より5km離れた場所で発見されています。

肖寧氏はSCP-■■■が無力化された翌月にパートナーである宁巴氏と共に『墓参り』をしに瑚雀森へ訪れました。