付記：インタビューは瑚雀森内にある事務所にて行われました。記録機器はエージェント・チャオの持つ携帯電話の録音、事務所内の夜間パトロール用のカメラを用いています。

〈20■■-02-17〉

エージェント・チャオ：ではインタビューを始めます。

肖寧氏：よろしくお願いします。

エージェント・チャオ：まずお名前と年齢をお願いします。

肖寧氏：肖寧と申します。年は■■です。

エージェント・チャオ：ここにはよく来られますか？

肖寧氏：はい。母の墓参りとして。ですが、いつからかこの森が立ち入り禁止となってしまったので、来られなくなりました。

エージェント・チャオ：そうだったんですね。あなたはSCP-■■■についてどれだけ知っていますか？

肖寧氏：[眉根を顰める]SCP-■■■？母のことをそう相称しているのですか？

エージェント・チャオ：[言葉に詰まる]すみません、言い間違えました。桃灼さんです。

肖寧氏：[小さく息を吐く]母は俺が産まれてから父にすぐに預けました。俺が17の頃に宁巴(肖寧氏のパートナーであろう名前)と逢って以来、ずっとこの森から見守ってくれました。

[肖寧氏は下を向く]

肖寧氏：母は俺を愛してくれていました。初めて面と向かって会った時に俺を抱き締めてくれて。こちら(前髪の掛かっている左頬を指す)を優しく撫でてくれました。

エージェント・チャオ：何故あなたの前髪は左に掛かっているんですか？

肖寧氏：幼少期から継母に虐げられて以来、自分がいなくなればいいと自傷をしてしまう癖がついていて。[1秒の沈黙]でも、宁巴が気付いてくれて薬を塗ってもらってからはなくなりました。

エージェント・チャオ：なるほど。続けてください。

肖寧氏：母の能力についてはもうご存知ですね？俺が宁巴とこの森に来た時に湖を見つけて、そこに沿った道に行けば穴の開いている洞窟を見つけました。中は螺旋状の階段になっていたので、そこを降ってしばらく歩けば母のいる広い空間に着きました。母と会話をして、俺と宁巴を祝福して、母は邪祟を全て消すために亡くなりました。

エージェント・チャオ：桃灼さんの言動と概ね一致していますね。[3秒の沈黙]今、財団が桃灼さんを保護しています。

[肖寧氏が勢いよく立ち上がる。椅子が倒れた衝撃でエージェント・チャオの携帯電話が落ちる。携帯電話を拾うエージェント・チャオに肖寧氏は焦って椅子を起き上がらせてから再び座った]

肖寧氏：すみません、取り乱しました。壊れていませんか？

エージェント・チャオ：大丈夫です。その様子だと知らなかったようですね。

肖寧氏：はい。生き返ったということですか？

エージェント・チャオ：はい。

肖寧氏：[安堵したように息を吐く]そうか。母さんはまだ。[涙ぐむように見える]

[5秒の沈黙]

エージェント・チャオ：肖寧さん。最初に聞いたことをもう一度聞きます。あなたはいくつですか？

肖寧氏：[4秒の沈黙]■■です。これは本当で、そして覆すものではありません。

エージェント・チャオ：本来の時間に合わせればあなたは■00年を超えています。これもあなた、いえ、桃灼さんの能力を引き継いでいるからですか？

[肖寧氏が頷く]

肖寧氏：今はもうありませんが、時を戻す能力と不老の能力を持っています。願いを持ち続けている間は途切れることはありません。

エージェント・チャオ：願い？

肖寧氏：母は言ったのか分かりませんが。俺たち邪祟は願いを持って生まれ、そして生きます。誰かに殺されない限りこの願いを叶い終わるまでは死にません。

エージェント・チャオ：では、あなたの願いは？

肖寧氏：宁巴と共に生きる未来です。

〈記録終了〉

〈終了報告書〉

肖寧氏の住民票を確認したところ、氏名・生年月日の詐称、住居場所、勤務先を発見しました。エージェント・チャオは氏名・生年月日の詐称を証拠に肖寧氏を警察に渡すことなく、また、Bクラス記憶処理も受けませんでした。

肖寧氏にBクラス記憶処理を施しませんでした。